扶養内パートは今後どうなる?第3号被保険者と社会保険適用拡大の正しい話

「第3号被保険者制度って、なくなるんですか?」
「パート扶養って無くなるんでしょ?」

最近、扶養制度の今後について不安視する声が多く見られます。SNSや動画では「専業主婦も保険料を払うようになる」「扶養完全廃止!?」といった刺激的な見出しも目立ちます。

ですが、2025年に成立した法律で確定したことを一つずつ確認していくと、実態はかなり違います。この記事では、公的資料だけをもとに「すでに決まったこと」「まだ議論の段階のこと」を分けて整理します。


① 確定したのは「第3号の廃止」ではなく「社会保険の適用拡大」

2025年6月13日に成立、2025年6月20日に公布されたのが、年金制度改正法(正式名称:社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律)です。

ここで真っ先に押さえておきたいのは、この法律に「国民年金第3号被保険者(だいさんごうひほけんしゃ)制度の廃止」は盛り込まれていない、ということです。今回確定したのは、被用者保険(厚生年金・健康保険いわゆる社会保険)の適用拡大です。

つまり「第3号制度そのものをなくす」のではなく、「社会保険に入る人の範囲を広げる」という改正だと考えてください。結果として第3号から外れる人は増えますが、それは制度の廃止とは意味が違います。ここが、「扶養制度の廃止!?」といった記事と事実が食い違っている一番のポイントです。

何が変わる?

短時間労働者(パート・アルバイト)が社会保険に加入するかどうかは、これまで複数の要件で判断されてきました。今回の改正で見直されるのは、主に次の3つです。

項目 これまで 改正後
企業規模要件 従業員51人以上の企業のみ対象 段階的に縮小し、最終的に企業規模を問わず対象
賃金要件 月額8.8万円以上(いわゆる「106万円の壁」) 撤廃
個人事業所 常時5人以上を使う法定17業種のみ強制加入 常時5人以上を使う全業種に拡大

賃金要件と企業規模要件が撤廃されると、短時間労働者は週の所定労働時間が20時間以上(+2か月を超える雇用見込みがあり、学生でない)であれば、勤め先の規模や月収にかかわらず社会保険に加入することになります。

いつから?

すべてが一斉に変わるわけではなく、段階的に進みます。

  • 企業規模要件:法律の公布(2025年6月)から10年かけて段階的に縮小・撤廃
  • 賃金要件(106万円の壁):公布(2025年6月)から3年以内で、全国の最低賃金が1,016円以上となることを見極めて判断されます(最低賃金1,016円以上の地域で週20時間働くと、年額換算で約106万円になるため)
  • 個人事業所の適用拡大:2029年10月施行。ただし施行時点ですでにある事業所は、当分の間は対象外です。

「来月から急に全員加入」という話ではない、という点はパートで働いている方や労務担当者が把握しておきたいポイントです。

🔗 参照:年金制度改正法が成立しました|厚生労働省


② 扶養内でパートをしている方はどうなる?

ここが、いちばん気になる方が多いポイントでしょう。厚生労働省も公式サイトのよくある質問で正面から回答しているので、その内容に沿って整理します。

週20時間以上働くと、社会保険に加入することになる

配偶者に扶養されている方(第3号被保険者)がパート・アルバイトで働く場合、雇用契約などでの週の所定労働時間が20時間以上であれば、社会保険(厚生年金・健康保険)に加入することになります。

社会保険料の負担は発生します。ただ、デメリットばかりではありません。

  • 将来の年金が、基礎年金に厚生年金が上乗せされ、終身で受け取れる
  • 健康保険からも、病気・けが・出産で会社を休んだときの給付(傷病手当金・出産手当金など)が手厚くなる
  • もしものとき、障害を負った場合の保障も手厚くなる(国民年金だけなら対象外の障害でも障害厚生年金の対象になる)

たとえば、これまで扶養内(第3号)で月8万円ほど働いていた方が、シフトを増やして週20時間以上・月10万円で働くようになると、社会保険に加入し、その分だけ将来の厚生年金が積み上がっていく、というイメージです。

週20時間未満なら?

週の所定労働時間が20時間未満であれば、原則として社会保険の加入対象にはなりません。 この場合は、引き続き配偶者の扶養(第3号)でいられます。

ただし、注意点が2つあります。

  • 残業などで一時的に週20時間以上になっても、すぐに加入対象になるわけではありません。ただし、週20時間以上の状態が2か月を超えて続くようであれば、加入対象となることがあります。
  • 年収130万円以上になると、週20時間未満で働く場合でも配偶者の扶養(第3号)から外れ、国民年金と国民健康保険の保険料が発生します。いわゆる「130万円の壁」は、今回の改正後も別途残るということです(収入が一時的に上がった場合は、事業主の証明により引き続き扶養が認められる特例があります)。

担当者がやること

☑ 短時間労働者の週の所定労働時間を契約書ベースで確認する
☑  扶養内(第3号)で働いている従業員に、適用拡大の時期と影響を早めに伝える
☑  新たに加入対象となる従業員について、保険料負担の軽減措置(後述)が使えるか確認する

🔗 参照:社会保険の加入対象の拡大について|厚生労働省
🔗 参照:「年収の壁」への対応|厚生労働省


③ 「第3号制度が廃止される」という話の正体

ではなぜ、「第3号がなくなる」「扶養制度が終了する」という情報がこれほど広がっているのでしょうか。原因は、「提言・議論」と「決定事項」が混同されていることにあります。

第3号被保険者制度そのものの縮小・見直しは、確かに長年議論されています。

  • 社会保障審議会の年金部会では、以前から「第3号被保険者を将来的に縮小していく」方向性が共有されてきました
  • 財務省の諮問機関である財政制度等審議会も、保険料を負担せずに基礎年金を受け取れる点などを「公平性」の観点から取り上げ、制度の見直しを建議(提言)してきています

ただし、これらはあくまで「検討・提言」の段階です。年金部会の議論も財政審の建議も、それ自体が法律を変える力を持つわけではありません。実際、2025年に成立した改正法では、第3号制度そのものの廃止・縮小は見送られています

審議会の議論や建議が「もう決まったこと」のように切り取られて拡散される——これが「第3号がなくなる!?」という不安の正体です。

まだ決まっていないこと

  • 第3号被保険者制度そのものを縮小・廃止するかどうか
  • 仮に見直す場合の、対象者や所得制限などの具体的な中身

これらは法律として確定していません。今後の審議会・国会での議論を、一次情報で追っていく必要があります。

なお、仮に将来的に制度が見直される場合でも、一般的に年金制度の改正は、すでに受給している方や加入実績を積んだ方の給付がただちに止まる・減るという形ではなく、これからの取り扱いを段階的に変えていく形で議論される、という点も押さえておくと、過度な不安は避けられます。

🔗 参照:財政制度等審議会 財政制度分科会|財務省


補足:新たに加入対象になる従業員への支援策

適用拡大で新たに社会保険に加入する短時間労働者には、特例的・時限的な保険料負担の軽減措置が設けられます。

  • 対象:従業員数50人以下の企業などで、要件の見直しにより新たに加入対象となる短時間労働者で、標準報酬月額が12.6万円以下の人
  • 期間:3年間
  • 内容:本来は労使折半の保険料について、希望する事業主が自社の負担割合を増やして従業員の負担を軽くできる。事業主が追加で負担した分は、その全額を制度全体で支援する。

「保険料負担で手取りが減る」という不安に対して、激変緩和の仕組みが用意されている、という点はパートで働く方へぜひ伝えてあげてください。


まとめ:「第3号がなくなる」ではありません

最後に、この記事の核心をもう一度整理します。

  • 確定したのは「社会保険の適用拡大」であって、第3号被保険者制度(社会保険の扶養制度)そのものの廃止ではありません。
  • 適用拡大により、週20時間以上働く扶養内パートの方は社会保険(厚生年金・健康保険)に加入することになりますが、その分将来の年金や保障は手厚くなります
  • 週20時間未満であれば、原則これまでどおり第3号でいられます(ただし130万円の壁は別途残ります)。
  • 第3号制度そのものの縮小・廃止は、財務省(財政審)や審議会で議論されている段階で、まだ決まっていません

「第3号がなくなる」のではなく、「社会保険に入る人が段々と増えていく」。これが、いま確定している事実です。不安をあおる情報に振り回される前に、自社の従業員がどの区分に当てはまるのかを一度整理しておくことをおすすめします。

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